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縁 は 異 な も の
68歳の挑戦から”縁は異なもの”にタイトルを変更しました。
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墨を知る

奈良墨を訪ねて

はるか昔、私が小学生の時です。
墨作りを家業とされている同級生のお宅へ、
クラスで見学に行ったことがありました。
その時の記憶ですが、う~んと・・・
うす暗い部屋に灯明がずらっと並んでいて、
真っ黒の手の職人さんたちが横並びで、黒い塊を練ってはったなあ・・・
墨の作られる工程を見学したはずなのに
おぼろげな思い出としてしか浮かびません。

 11月の半ば、小学校の同窓会で再会したその同級生、玄勝堂さんが、
今年の墨作りが始まったので見学においでと誘って下さいました。
魅力的なお誘いにはすぐ飛びつく、私とensachiさんです。
昔の記憶をたよりに、懐かしい奈良の路地を曲がり歩いて
玄勝堂さんをお訪ねしました。

いやいや伝統工芸の奥の深さ、大変さは承知しているつもりでしたが
この墨作りも、へ~ぇ、へ~ぇと感嘆するばかり。

いまだ奈良墨はほぼすべて、昔ながらの手作業で作られる。
煤の原料になる油の最高級は胡麻油。
二斗四升(約43リットル)の油を燃やして
50匁(約190グラム)~180匁(約670グラム)の煤が採れる。
(ここは尺貫法の世界です!)
油を燃やす灯芯の太さで、採る煤の量と粒子の大きさが違い、
細かく少ないほど高級墨になります。
灯芯の材料はイグサの芯をより合わせる。
煤がくっつく蓋は信楽焼の素焼きで特注。
油を燃やし続ける部屋は無風状態に保つ。
もうひとつの原材料の膠(にかわ)は
現在では良質なものが手に入りにくくなっている。
墨をかたち作る、木の型枠の職人さんは
奈良市内で高齢の方、ただ一人だと。

ここらへんまでお聞きしたら
もう墨作りは、近い将来できなくなるんじゃないかって心配になってきます。
でも玄勝堂さんには立派な後継者が育ちつつあり、
材料調達の不安にも着々と手を打っていらっしゃるとか、
まあ私たちが余計な心配をすることはないようでした。
さてそんな中での墨作りはいったいどんなかと思いますよね。

油煙
色々な種類の油から採取した煤
右奥に見えるのは膠(にかわ)、手前右の貝殻は墨を研ぎあげるハマグリ


芯P1040064
燈心 イグサの芯をより合わせる

膠
ほぼつきっきりで、膠(にかわ)を湯せんで溶かす


何十という工程のほんの一部を見学させてもらっただけですが、
なるほど、これは大昔と変わらんわ、と実感しました。

例えば
型入れの工程では、
職人さんの敷いている座布団の下で、程よい硬さに保たれた墨の練り玉から
すばやく墨一個分の量をちぎり取り、
天秤で計り、(ほぼその量に狂いなし)
捏ね、型枠に押し込み、
万力で15分間ほど固定する
見ていて惚れ惚れするような一連の作業の手際良さ。
なんと一日で、
一人約600個も作るそうです。

天秤P1040071
ここに座ったままあっという間に一連の作業をしてしまいます
右にあるのは年期の入った天秤、手前は木枠に押しをしている万力

木枠
木の型枠 精巧な作りで、全部バラバラに外すことができます 


余談ですが、わが同級生もちょうどその作業をしていて、手が真っ黒です。
墨の汚れってなかなか落ちません。
しかし同窓会で会ったとき、彼はきれいな手をしていました、確か・・
聞きましたよ、なぜかって。
思いがけない答えでした。
ウグイスの糞で洗うんだそう。
へぇ~ですよね。
指
爪の中まで墨が染み込んでいますね


墨が完成するまでの気の遠くなるような手作業の数々は
創業者であるお父様の代からの古い木造の建物で行われています。
土壁が剥き出し、梁がそのままの天井、廂の隙間からは外気が入り、
ほ~、と思うような建物ですが、
墨作りの環境には最適なのでしょう。
木の型枠はもちろんのこと
おそらく創業時から使われているだろう作業道具の数々、
墨を徐々に乾燥させるための大量の木灰でさえも
この建物と共に、玄勝堂さんの宝物に違いありません。

灰で乾燥
型から取り出した墨は徐々に水分を抜かないと歪みや割れが生じます
湿り気を変えた灰に毎日墨を移動させます。墨の大きさで10日から30日かかります


乾燥
灰から取り出した墨は、かき餅のように稲わらで編んでぶら下げたり、
網棚に並べて、30日から100日空気乾燥します




作業場
この建物は創業時からのものです


見学の最後、記念にと握り墨をさせていただきました。
墨として完成するのに、2,3か月かかるとか。
他の墨と一緒に
あの木灰の中でゆっくり水分を抜かれ
かき餅のように、さらに干され
きれいにしてもらい、
そしてようやく私のもとにきたときは
指紋バッチリの一丁(14グラム)の墨に
どんな言葉をかけてやろうかなんて思ってしまいます。

この年になって、
奈良に住んでいても、
ほんとうの奈良の奥深いところをまだまだ知らないなあとちょっと恥ずかしくなります。
そしてこんなに身近に伝統工芸に携わっているひとがおられるのに
皆、案外気が付いていないのかも知れない、と思いました。
勿体ないことです。

どうぞいつでも見学にお越しください、と玄勝堂さんのありがたいお言葉。
皆さん製墨見学はいかがですか。



コメント

突然の訪問、失礼いたします。
私はこちら⇒b--n.net
でブログをやっているきみきといいます。
色々なブログをみて勉強させていただいています。
もしよろしかったら相互リンクをお願いできないでしょうか?
「やってもいいよ」という方はコメントを返してくだされば、
私もリンクさせていただきます。
よろしくお願いします^^
[2017/12/16 16:16] URL | さくら #- [ 編集 ]

墨を知る 
タイトルをみて、これは読ませてくれる記事だと思いました。
案の定、最後まで一気に読み終えました。
どちらかといえば、地味で単調になりやすいテーマで
これだけ惹きつける文章はスゴいです。
手間ひまがかかる墨の工程の押さえどころを
しっかりと把握したレポーターの技量と情熱に
脱帽するばかりです。
たった一度の見学で、よくぞこれだけのことを観察してこられました。
奈良にも実力のあるものがたくさん存在している。
いまさらながら、そんなことを教わることができました。

書道の心得もあるハナコのママさんにとって、
“墨を知る”ことは、書の豊かさに通じることでしょう。
[2017/12/16 22:22] URL | スマイル(*^▽^*) #- [ 編集 ]

墨の匂いが好きです
昔むかし、一列に並んで見学したよな~♪見せてもらおうよ、もう一度。
墨の匂いが好きで、遊び心で訪れたところ
通されたのは、ヒノキ造りの違い棚や床の間がある、広い三部屋が開け放たれたお座敷でした。お茶菓子の接待を受けて、二人して恐縮して玄勝堂のご主人様のお話を聞かせていただいた次第です。

とんでもない質問を連発する私達に、興味津々のお話しをして下さるので、
これはメモ! 写真! 二人は興奮し、笑い、感心した一日でしたよね。

墨作りについては、
ハナコのママが読み応えある記録にしてくれて、本当にありがたいです。
読んだ娘が「お母さんがブログを書いていたら、こんなによく分かる文章になってないな(笑)」と。娘は本当のことをズバリ言ってくれます💦

良質の墨を作るために、丁寧な手作業を守り続けておられる
伝統産業の職人さん。
日本文化を守っておられる姿を見て、誇りを感じました。
ご家族皆さまが暖かい心遣いをしてくださり、本当にありがとうございました。
[2017/12/17 22:02] URL | ensachi #- [ 編集 ]

懐かしい香り
筆を持つことさえ少なくなった昨今。
この季節 年賀状書く筆さえ 墨の香りがない筆で。
お恥ずかしい生活しています。
墨をすって、心を落ち着けては随分以前の話です。
昔、古梅園の墨作りをテレビで見て、大変な作業だと感心した事思い出しました。
出来上がる行程を詳しく書いてくださって、よくわかりました。
握り墨も出来上がり待ち遠しいですね。
お二人の微笑ましいコンビで質問されてる様子が手に取るようにわかり、うらやましく思いました。
[2017/12/17 22:26] URL | ようこ #y8GjvvOo [ 編集 ]


ハナコのママさんのblogで墨を知る事が出来ました。 ありがとうございます(#^.^#) そもそもどうして奈良県の墨や筆が生産高1位なのかを考えてみることもなかったので、新しい興味とお勉強になりました。

奈良にお寺が多く 経典が必要で 写経される。 需要と供給の中で生まれた技術が伝統となり受け継がれる。 素晴らしいですね。
最近は印刷物が多く需要はどうなのか分かりませんが、Amazonや楽天でも簡単に 玄勝堂さんの墨を買えるのは便利だと思います!

作り方よりも ウグイス糞が気になっているまいど~るであります(#^.^#)

[2017/12/19 18:29] URL | まいど~る #3v9IlUEY [ 編集 ]


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